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OpenChain-Telco-SBOM-Guide_JP.md

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OpenChain Telco SBOM Guide Version 1.0

本書は英文を翻訳したものである。この翻訳と英文との間に何らかの相違がある場合は英文が優先されるものとする。

1. スコープ

本文書 "OpenChain Telco SBOM Guide" は、事業体がソフトウェア部品表(SBOM)を作成・提供・消費する方法に関連する特定の要件を概説することを目的とし、本ガイドに準拠するSBOMを作成および/または消費する事業体がSBOMを作成および消費するためのツールおよびプロセスの再現性と合理性を確保できるようにする。

本ガイドは、適合する事業体が、いかなるバージョンの OpenChain (OpenChain Specification)を採用することを要求するものではないが、採用することが大いに推奨されることに留意されたい。

このガイドはSBOM単位で適応できるように設計されており、事業体はSBOMを提供する唯一の方法として本ガイドを使用できるものの、本ガイドが参照するのは個々のSBOMでありSBOMを提供する事業体ではない。 本ガイドに沿ったSBOMを「OpenChain Telco SBOM Guide互換」と呼ぶことができる。

本ガイドに概説されている要件に一致するSBOMをリリースすることは、同じソフトウェアのSBOMを別の方法または形式で配信することを妨げるものではない。

本ガイドは Creative Commons Attribution License 4.0 (CC-BY-4.0)の下にライセンスされている。

2. 用語と定義

本文書内のキーワード "MUST", "MUST NOT", "REQUIRED", "SHALL", "SHALL NOT", "SHOULD", "SHOULD NOT", "RECOMMENDED", "NOT RECOMMENDED", "MAY", "OPTIONAL"は、BCP 14 [RFC2119] [RFC8174] に記述されているとおりに解釈される。

データ形式

データ形式とは、SBOM内の情報のデータ形式を意味する。可能なデータ形式として、SPDX、Cyclone DX、SWID、その他の独自形式、がある。

事業体

事業体(entity)とは、第三者(他の組織または個人など)にソフトウェアを頒布する法人(営利、非営利、または、個人)を意味する。事業体には、グループ会社、事業体の共通支配下にある会社、は含まれない。

ソフトウェア部品表

ソフトウェア部品表(SBOM)とは、ソフトウェアを構築する際に使用される様々なソフトウェアコンポーネントの詳細とサプライチェーンの関係を含む正式な記録である。

SBOMタイプ

SBOMは以下のいずれかのタイプである:

  • Design,
  • Source,
  • Build,
  • Analyzed,
  • Deployed,
  • Runtime.

これらタイプの定義についてはCISA documentを参照すること。

SPDX

SPDX(Software Package Data Exchange)とは、ISO標準(ISO/IEC 5962:2021)であり、ソフトウェアパッケージのSBOMを相互に交換するための規格であり、関連するライセンスや著作権情報も含まれる。この標準はLinux Foundation SPDXプロジェクトによって作成されている。

OpenChain

OpenChainとは、 OpenChain Specification ISO/IEC 5230:2020を意味し、オープンソースソフトウェアを組み込んだソフトウェアソリューションを相互に交換する組織間の信頼を構築するベンチマークを提供するために、質の高いオープンソースライセンスコンプライアンスプログラムの主要な要件を規定した国際規格である。 OpenChain Specificationは、Linux Foundationの OpenChain projectによって作成されている。

推移的依存性

推移的依存性(transitive dependencies)とは、ソフトウェアの実行に必要なすべての ソフトウェアコンポーネントのことである。直接的な依存関係ではないパッケージの依存関係(間接的な依存関係:依存先の依存先)も含まれる。

パッケージURL(PURL)

パッケージURL(PURL)とは、ソフトウェアパッケージを一意に識別するためのデファクトスタンダードである。

3. 要求要件

3.1 データ形式

本OpenChain Telco SBOM Guideと互換性のあるSBOMは、ISO/IEC 5962:2021 で標準化されている SPDX データフォーマットのバージョン 2.2、またはバージョン2.3 に準拠する。含まれる要素に関しては3.2節に記載する。

3.1.1 検証と参考資料

3.1.2 根拠

ソフトウェアの供給者と受領者の双方にとって、通信業界のソフトウェアサプライチェーンにおけるツールおよび能力の簡素な取り扱いと合理化を確かなものとするために、OpenChain Telco SBOM Guideと互換性のある文書は、ISO/IEC 5962:2021で標準化されているSPDXデータ形式に準拠しなければならない。 本標準SBOMデータ形式を使用することで、ソフトウェアを供給する組織と消費する組織の、双方の互いの窓口において、複雑さが簡素化される。

事業体は、内部使用のために代替データ形式を自由に使用することができ、また、SBOMを要求する組織に対して、あるいはソフトウェアの供給者が自発的に、代替データ形式でSBOMを提供することができる。 本OpenChain 通信業界SBOMガイドは準拠すべきSBOMガイドであり、準拠すべき組織のガイドではない。本ガイドに適合する事業体は存在せず、本ガイドを実装した事業体によって提供された、本ガイに適合するSBOMのみが存在する。

3.2 OpenChain Telco SBOM Guideに互換性のあるSBOMに含まれるSPDX要素

以下の要素が必須である。

ドキュメント作成情報(Document creation information)

  • SPDXVersion: SPDXの必須項目
  • DataLicense: SPDXの必須項目
  • SPDXID: SPDXの必須項目
  • DocumentName: SPDXの必須項目
  • DocumentNamespace: SPDXの必須項目
  • Creator: SPDXの必須項目
  • Created: SPDXの必須項目
  • CreatorComment: “SBOM Build information” に入力できるようにする項目

パッケージ情報(Package information)

  • PackageName: SPDXの必須項目
  • SPDXID: SPDXの必須項目
  • PackageVersion: “NTIA SBOM最小要素” によって必要とされる項目
  • PackageSupplier: “NTIA SBOM最小要素” によって必要とされる項目
  • PackageDownloadLocation: SPDXの必須項目
  • FilesAnalyzed
  • PackageChecksum: “NTIA SBOM最小要素” によって推奨される項目
  • PackageLicenseConcluded: SPDXの必須項目
  • PackageLicenseDeclared: SPDXの必須項目
  • PackageCopyrightText: SPDXの必須項目

また、パッケージはパッケージURL(PURL)によって識別されるべきである。

SPDX要素間の関係

  • Relationship: “NTIA SBOM最小要素” により、少なくとも DESCRIBES と CONTAINS が必要とされる項目

3.2.1 検証と参考資料

NTIA SBOM最小要素

3.2.2 根拠

通信業界の調和を認識し、また可能であればNTIAの最小要素を超える特別な要件の必要性を認識し、期待されるSBOMの要素について業界の見通しを確実にするため、本「OpenChain Telco SBOM Guide」を提案する。

“Component Hash” は推奨されるものの、“NTIA SBOM最小要素” には要求項目として無い。 SPDX では PackageChecksum に対応する。パッケージを一意に識別するために重要なので必須とする。 なお、ほとんどのSCA(Software Composition Analysis)ツールはハッシュを生成する機能を持っている。

パッケージURL(PURL)は、ソフトウェアパッケージを一意に識別するためのデファクトスタンダードである。

3.3 機械が読み取り可能なデータ形式

OpenChain Telco SBOM Giideに互換性のあるSBOMは、最低限、「Tag:Value形式」または「JSON形式」の機械が読み取り可能なデータ形式のどちらかの形式とする。

3.3.1 検証と参考資料

「Tag:Value形式」と「JSON形式」は以下を参照のこと。

3.3.2 根拠

SBOMには3つの主要フォーマットがある: SPDX、CycloneDX、SWID

これら3つのフォーマットは、NTIAの文書「The Minimum Elements For a Software Bill of Materials (SBOM)」(参考文献のセクションを参照)で推奨されている。

OpenChain Telco SBOM Giideに互換性のあるSBOMのデータ形式としてSPDXを選択した理由は以下の通り:

  • SPDXは、ISO規格であるため
  • SPDXは、CycloneDXと比較してライセンスコンプライアンスのための機能が充実しているため
  • SPDXは、人間が読めるフォーマットであるため(CycloneDXはJSONとXMLしかない)
  • SWIDは、本格的なSBOMフォーマットというよりはソフトウェア識別子であるため

簡素化されたツールチェーンを促進するために、本ガイドに適合するSBOMは機械が読み取り可能なデータ形式である必要がある。また、再現性と整合性を確保するために、本ガイドに適合するSBOMは「Tag:Value形式」または「JSON形式」でなければならない。なお、事業体はその他の機械が読み取り可能なデータ形式をリリースすることはできるが本ガイドに準拠する必要はない。

「Tag:Value形式」は最も人間が読みやすい形式であり、様々なSPDXフォーマット間のコンバーターが存在する(例えば、https://tools.spdx.org/app/convert/)。 また、「JSON形式」はいくつかのツールによって提供される。

3.4 人間が読み取り可能なデータ形式

OpenChain Telco SBOM Giideに互換性のあるSBOMは、最低限、「Tag:Value形式」または「JSON形式」の人間が読み取り可能なデータ形式のどちらかの形式とする。

3.4.1 検証と参考資料

「Tag:Value形式」と「JSON形式」は SPDX 2.2 を参照のこと。

https://spdx.github.io/spdx-spec/v2.2.2/conformance/#44-standard-data-format-requirements)

3.4.2 根拠

「Tag:Value形式」は人間が読むこともできるため、標準化された "機械が読み取り可能なデータ形式" と "人間が読み取り可能なデータ形式" の両方の要件を1つのファイルで満たすことができる。事業体は、人間が読み取り可能なデータ形式をリリースすることができるが、本ガイドに準拠する必要はない。

3.5 SBOM ビルド情報

本OpenChain Telco SBOM Giideに互換性のあるSBOM は、いつ作成されたか(SPDX の Created フィールドを使用)という情報と、どのバージョンのソフトウェアで作成されたか(SPDX の CreatorComment フィールドを使用)という情報を含めなければならない。

SPDX の Created フィールド とは:

  • Organizationキーワードを示す行を含まなければならない
  • Toolキーワードを示す行を記述しなければならない。かつ、この行では Toolキーワードの後にツール名とツールバージョンを記述しなければならない

また、ツール名とツールバージョンはハイフン("-")で区切るべきである。

OpenChain Telco SBOM Giideに互換性のあるSBOMは、CreatorCommentフィールドにCISAが定義するSBOM Typeを提供しなければならない。

3.5.1 検証と参考資料

SPDX規格

3.5.2 根拠

どのツールのどのバージョンでSBOMが作成されたかを知ることは重要である。

SPDX 規格では、例として「toolidentifier-version」を挙げているが、この構文が必須というわけではない。

例えば、出力するツールを示す際に:

Creator: Tool: sigs.k8s.io/bom/pkg/spdx

他の例として:

Creator: Tool: scancode-toolkit 30.1.0

また別の例として:

Creator: Tool: SCANOSS-PY: 1.5.1

ここで、名前にはハイフンが含まれ、ツール名とツールバージョンはハイフンで区切られていない。

従って、正確な構文を要求することはできない。

3.6 SBOM納入のタイミング

SBOM は、遅くともソフトウェア(バイナリ形式またはソース形式のいずれか)の引渡しの時点までに納品しなければならない。

3.6.1 検証と参考資料

NTIA SBOM最小要素 の “Distribution and Delivery” セクション

3.6.2 根拠

納品される側の事業体がソフトウェアとそのSBOMを確実に受け取ることができるように、SBOMはソフトウェアの納品よりも遅くならないように引渡さなければならない。ソフトウェアの発注者が指示した場合は、ソフトウェアの引き渡し前にSBOMが納品されてもよいが、本ガイドへの準拠を確実にするためにソフトウェアの納品時には対応するSBOMも納品をしなければならない。

3.7 SBOMの納入方法

技術的に可能な場合、SBOM はソフトウェア「パッケージ」に埋め込まなければならない。スペースに制約のある組込みシステムの場合など、提供されるソフトウェア「パッケージ」に SBOM を組み込むことが技術的に不可能な場合、ソフトウェア供給者(受注者)は少なくとも 18ヶ月利用可能な SBOM のウェブホスト版を提供し、ソフトウェア受領者(発注者)が自身の使用のためにこれらをローカルにコピーし保存する能力をいかなる形でも制限してはならない。このような制限は、追加の秘密保持契約において受領者に課してはならない。

3.7.1 検証と参考資料

NTIA SBOM最小要素 の “Distribution and Delivery” セクション

3.7.2 根拠

ウェブホスティングなどでSBOM を提供する手法は安定性が低く、またアクセスが長期間保証されない。このように、SBOM をソフトウェアの「パッケージ」に含めることが技術的に不可能なシナリオでは、SBOM をオンラインで公開することが許可される。この期間は、再認証に関する "OpenChain specification" の要求に沿ったものである。

3.8 SBOMの範囲

SBOM には、すべての依存関係を含め、製品と共に提供されるすべてのオープンソースソフトウェアを含めるものとする。SBOM には、すべての商用コンポーネントを含めるべきである。

含まれない成分がある場合は、"known unknown" として報告しなければならない。

3.8.1 検証と参考資料

NTIA SBOM最小要素 の “Known Unknowns” セクション

3.8.2 根拠

SBOM に市販のコンポーネント情報を持たせることは、可能、望ましい、実行可能でない、かもしれない。しかしながら、SBOMは可能な限り完全であることが望ましい。

3.9 SaaSで提供されるサービスのSBOM

本OpenChain Telco SBOMガイドはSBOMレベルでのみ適用されるため、ソフトウェア提供の一部またはすべてにOpenChain Telco SBOMに互換性のあるSBOMを提供することを選択したエンティティには、SaaS提供する際にOpenChain Telco SBOMに互換性のあるSBOMを提供する義務はありません。 ただし、企業は、OpenChain Telco SBOM Guideを自社の SaaS 製品にも適用することを選択し、その結果、SaaS 製品で使用されるオープンソース ソフトウェアを、推移的な依存関係とともに SBOM として提供することもできます。

3.9.1 検証と参考資料

3.9.2 根拠

SaaSで提供されるサービスのSBOMが何を含むべきかについて、現在のところ業界のコンセンサスは得られていない。

3.10 コンテナ用SBOM

コンテナ用のSBOMには、コンテナで提供されるすべてのオープンソースコンポーネントを含めるべきである。コンテナにインストールされたパッケージ、コンテナにコピーまたはダウンロードされたコンポーネント、およびコンテナ内でコンパイルされたコンポーネントを構築するために使用された依存関係のあるソフトウェア、が含まれる。

3.10.1 検証と参考資料

3.10.2 根拠

提供されるすべてのオープンソースコンポーネントは、SBOMの一部であるべき。

3.11 SBOMの検証

SBOM の完全性を保証するために、SBOM のデジタル署名を提供することが推奨される。

3.11.1 検証と参考資料

Sigstore (https://www.sigstore.dev/) は SBOM のデジタル署名の一例である。

3.11.2 根拠

SBOMの検証は重要なトピックであるが、OpenChain Telco-WG は、この作業を当面は他の取り組みに委ね、この文書の将来の改訂でこのトピックを再検討するつもりである。

3.12 SBOMのマージ

本ガイドに従ったSBOMは、SPDXの関係定義機能を使用して、互いに明確に定義された関係を持った複数のSBOMファイルから構築することができる。

3.12.1 検証と参考資料

複数のSBOMから1つのSBOMへマージするツールの一例: https://github.com/opensbom-generator/sbom-composer

3.12.2 根拠

大規模なソフトウェア製品を扱う場合、単一のSBOMよりも、個々の部品のSBOMを提供する方が容易なことが多い。

3.13 SBOMの守秘義務

SBOMは秘密保持契約の対象であってもよい。ただし、本ガイドに適合するSBOMは、受領者が再頒布する権利を持つソフトウェアに適用されるSBOMに対して、受領者の再頒布を妨げるような秘密保持契約の対象になってはならない。

3.13.1 検証と参考資料

NTIA SBOM最小要素 の “Access Control”セクション

3.13.2 根拠

オープンソースソフトウェアライセンスの中には、いかなる受領者もソフトウェアを再頒布できるものがある。このような状況では、受領者もSBOMの関連部分を再頒布できるようにすべきである。

4. 適合通知

ソフトウェアがSBOMに適合していることを示すために、以下の記述を使用してもよい:

"このソフトウェアは、OpenChain Telco SBOM Guide v1.0 に準拠したSBOMとともに提供される。このガイドは、https://github.com/OpenChain-Project/Telco-WG/blob/main/OpenChain-Telco-SBOM-Guide_EN.mdで入手できる。"

"このSBOMはOpenChain Telco SBOMガイドv1.0(https://github.com/OpenChain-Project/Telco-WG/blob/main/OpenChain-Telco-SBOM-Guide_EN.md) に準拠しており、受領者には無償で提供される。受領者は、対応するソフトウェアを頒布するいかなる第三者に対しても、当該第三者にソフトウェアを頒布するために必要なすべての権利を有することを条件に、このSBOMを自由に再頒布することができる。"

また、ソフトウェアベンダーや通信システムサプライヤーにRFP、購買発注、受託開発発注を依頼する場合、RFP文書、発注文書、契約文書の記載事項として、以下の文を使用してもよい:

"ソフトウェアをリリースする場合、リリースされるすべてのソフトウェアについて、OpenChain Telco SBOM Guide v1.0 に準拠したSBOMを提供することを要求する。 このガイドは"https://github.com/OpenChain-Project/Telco-WG/blob/main/OpenChain-Telco-SBOM-Guide_EN.md"で入手できる。"

5. 参考文献